無邪気な彼女の恋模様
「てかさ、それってセクハラだから訴えればいいと思うけど。三浦さんに言えば動いてくれると思うよ。」

セクハラかぁ。
社内でもちゃんとセクハラの教育を受けているのに、やる人はやるんだなと感心してしまう。そしてその標的が私だなんて信じられない。
私には無縁のものだと思っていたのに。
だけど訴えるのも何か仰々しい気がして気が引ける。
それよりも、波多野さんがいつになく親身に話を聞いてくれて、それだけで今の私はお腹いっぱいだ。

「うーん、何か大ごとにしたくないっていうか、すんなり諦めてくれるのがいいんですけどね。」

煮え切らない私に波多野さんは深いため息をついて、頭をポンポンとした。

「はー。ならとりあえず着信拒否にでもしとけ。」

ぶっきらぼうにそう言うけど、頭をポンポンする手がとんでもなく優しくて、私は密かにときめいた。

だから、不意打ちは本当に卑怯だから。
抑えてる好きな気持ちが出てきてしまいそうになって、私は残りのロコモコ丼を急いで食べた。

やっぱり好きだなーなんて胸がキュンキュンしちゃってどうしようもない。
ほんと、波多野さんの彼女さんが羨ましい。
私も、頭ポンポンだけじゃなくて、もっといろいろ触られたいなぁ。

って、何を想像しているの、私は。
まずは落ち着こう。
うん、落ち着こう。
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