1人で生きることは死ぬよりも辛い
 私が返事をしてから4日が経った。

 貴方はいつまで私を待たせるのだろうか? ひょっとしたらアレは気まぐれで、返事はもう返って来ないかもしれない……
 そんなことにも気づかないほど私はうかれていたのだ。

 私には時間がないけど、貴方はそうじゃないかもしれない。その可能性の方が高いことに今更ながら気づいてしまう。
 実は、もて余した時間にちょっとしたいたずらをしたような、そんなものだったのかもしれない。

 昔の怖がりで泣き虫な私が顔を覗かせる。あっちに行けと頭をブルブルと振って弱気を蹴散らした。

 貸出コーナーで1冊を手に取る。

 返事が来ていたことに喜び、内容にムカついた。
 
 主人公は主人公らしくヒロインに優しくしなさいよね。


 私は持参したボールペンで返事を書いた。



Q.貴方の性別と年齢を答えなさい。
A.君はなんだか偉そうだね。そっちこそいくつなんだい?どうせ女の子なんだよね?

A.■■■■■■■■■(ボールペンでぐちゃぐちゃに塗られて読めない)


A.すみません。私は15歳の女子です。
Q.貴方のことを教えてください。



 どうせってなんだよ!あんたの方が偉そうじゃん!
 最初に思ったことをそのまま書いてやった。

 書き終えると、文句を言ってやったぜと気分が大きくなった。その文章を眺めているとゆっくりと気持ちが変化していった。
 そして、返事が来なくなることが怖くてぐちゃぐちゃにして消した。


 私にとって貴方は唯一、私をワクワクさせてくれる存在だ。

 まだ手放したくないと強く思った。

 そのおかげで私は素直になれた。またひとつ成長しちゃったな。どうせもうすぐ死ぬんだけどね!
 
 どうやってもその事実は覆らない。

 時間が私をただただ急かしてくる。そのことに意味はない。それがこの世界の決定事項。言うなれば運命ってやつか。

 私の大嫌いな言葉だった。遠ざけていたはずのそれが、形を変えて目の前にちらつくと、私は必死に運命を手繰り寄せようとしている。

 おかしな話だ。でもそれが生きると言うことなのかもしれない。

 なんとなくそんなことを思った。



 私は、幸せだったと思って死にたい。だから私は急がなければいけないのだ。そして確かめる必要がある。

 このワクワクが恋なのかどうか。



 その瞬間はすぐそこまで来ていることを、この時の私はまだ知らない。
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