クールな婚約者との恋愛攻防戦
お見合い日和


桜の大木が満開だ。


空を見上げれば雲一つない、真っ青な晴天。



今日はまさに……




「お見合い日和だなぁ」


先を歩く父が、今まさに思っていたことを先に口に出した。



半歩先を歩く父は、歩きながら私に振り返ると、



愛梨(あいり)。その着物、本当によく似合っているよ」

と、私を褒める。


今日の為に父が私に用意してくれた、落ち着いた赤い生地に白桜が散りばめられた、オーソドックスではありながらも上品でとても素敵な着物。金色の帯も可愛くて、私自身もこの着物をひと目見た時から気に入っていた。


「ありがとう、お父さん」

「本当に素敵よ、愛梨。でも、高原(たかはら)さんの前ではくれぐれも失礼のないようにね」

父の隣を歩きながら心配そうな顔をしてそう話すのは母だ。
母も、この日の為に新調した黒の留袖を身に纏っている。
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