クールな婚約者との恋愛攻防戦
「そうだ。キッチンってどこ? 見てみたい」

そう尋ねると、樹君が案内してくれる。
樹君はこの別荘には今まで何回かは来たことがあるとのことで、間取りとかシャワーの使い方とか把握してくれているらしいのが有難い。


案内してもらったシステムキッチンは、そこまで広さはないけれど、機能的で清潔感もあるし、大満足。


私が楽しげにキッチンを見渡していると「そう言えば」と樹君が口を開く。


「もう夕方だけど、夕飯どうする? 今日は外に食べに行くか?」

「夕飯? ああ、そうだねー」

「じゃあ車出して……あ、駄目だ」

冷蔵庫を開けながら、樹君がそう言う。


「駄目? 何で?」

「……さっき父さんが、やたら冷蔵庫に食材入れてるなと思ったんだよ。野菜とか肉とかギッシリ詰めやがって。野菜はともかく、生肉は今日調理した方が良さそうだ」

「ああ、そうなんだ。きっと私達の為に食べる物を用意してくださったんだね。後でお礼言わなきゃ」

「そうかもしれないけど……。ところで愛梨。お前ーー料理は出来るのか?」


樹君からの質問を受けた私は、即答、自信満々に。


「全然出来ない!」

「えっ⁉︎」

樹君が少し引いたような顔をした。
でも、家では家政婦さんがご飯を作ってくれていたし、そこはいつも任せっきりになっていたんだよなあ。


「樹君は出来るの?」

「出来るって程じゃないけど全然って訳ではないから……今日は俺が作るしかなさそうだな……」

「じゃあ、私も手伝う!」

「いや、いい」

「何で⁉︎」

「一人でやった方が早い気がする……。何となく」


それって、私が足手まといになりそうって言いたいのか!
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