クールな婚約者との恋愛攻防戦
そう思われているなら非常にショックだけれど、かと言って言い返せる程のスキルがある訳では、当然ない。

言ってしまえば、包丁をまともに握ったこともほとんどないのだ。



「でも、樹君の為にちゃんと料理出来る奥さんになりたいっていう気持ちはあるよ! だからせめて、樹君が料理してるところ隣で見ていたい」


何を言われても引き下がらないぞ、という念が通じたのか、樹君はハァとまた溜め息を一つ吐きながらも、


「分かったよ。まあ、正式な結婚までに愛梨が料理出来るようになる期間も必要だしな」


そう言って、計量カップを私に渡してきた。
見てるだけではなく、ちゃんと手伝わせてくれるようだ。


「じゃあ、まず米研いで」

「はい!
……ところで米を研ぐって、米を洗うってこと?」

「……まあ、間違ってはないけど」

「洗剤で洗うんだっけ?」

「……」


この後、米の研ぎ方から包丁の握り方、野菜の切り方まで、みっちりしごかれた。



そして、とても美味しそうなカレーライスが完成した。
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