クールな婚約者との恋愛攻防戦
幸い、コーヒー販売の列は空いていて、順番はすぐに回ってきた。


「愛梨はどれ飲む?」

先に選んだ樹君からそう尋ねられるも。



「あ、私はコーヒー飲めないから」

「え?」

「気にしないで」


樹君に楽しんでもらおうキャンペーン中なので、私は後でペットボトルの水でも飲めればじゅうぶんだ。


コーヒーを購入した後、近くのベンチに二人並んで腰をおろした。

ふと周りを見渡すと、園内はカップルが多いことに気付いた。
デートの定番スポットだもんなぁ。だからこそ、私も行きたい場所に選んだ訳だけれど。

私達も、はたから見たら仲の良いカップルに見えるのかな?

実際は……仲良しとはまだ程遠いし、婚約者だけどカップルとは言い難い関係性。

樹君からしたら、所詮ただの政略結婚だし。



「……樹君って、今まで何人くらいの女の人と付き合ってた?」

周りのカップル達を見ながら、つい気になってそんなことを質問してしまった。
でも、聞いた直後にハッとする。


「ご、ごめん。質問されるの嫌なんだよね?」

さっき車の中でああ言われたばかりなのに、うっかりしていた。
これじゃあ、樹君に楽しんでもらおうキャンペーンどころか、樹君にウザがられるキャンペーンになってしまう。


だけど樹君は、ゆっくりと口を開いた。


「別に何人もと付き合ってきたとかではないけど……まあ、付き合ってたことはあるよ」
< 33 / 79 >

この作品をシェア

pagetop