クールな婚約者との恋愛攻防戦
嫌がることなくあっさり教えてくれるから、思わず「え?」と聞き返してしまう。


「何だよ。聞かれたから答えたんだけど」

「だって、さっきは……」


私が何を言いたいのか、樹君はすぐに察したらしい。
一瞬、気まずそうに目を逸らし、だけど再び真っ直ぐに視線を合わせてくれる。


「……さっきは悪かった。確かに、普段自分の話はあんまりしないし、したいとも思わない。
だけど、これから一緒に暮らしていくのにそれじゃあ駄目だよな」

「え……」

「お見合いの日に愛梨が言っていた、〝どうせ結婚するなら楽しんだ方がいい〟って言葉、今なら少し分かる気がする。


……包丁もまともに握ったことなかったり、目玉焼きを電子レンジで作ろうとしたり、お前は想像以上にめちゃくちゃな奴だけど……


一緒にいると案外、楽しい」

「っ……」

「多分、お前が俺の為に頑張ってくれているからだと思うけど。

だから俺もーーお前になら、ちゃんと向き合いたいって思う」
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