クールな婚約者との恋愛攻防戦
そんな訳で、ようやく全員が座布団の上に腰をおろし、改めて向かい合う。


父と母に挟まれて座る私の正面には、お見合い相手であり、恐らく旦那様となる、高原 樹さんが座っていた。


上質なグレーのスーツに身を包んだ彼は、年齢は私より少し年上くらいだと思われる。

睫毛は長く、切れ長で涼やかな瞳。鼻筋も高く、薄い唇。肌も綺麗で、顔に関してはまさに願い通りのかっこ良さだった。


そんな彼は、先程からとにかくずっと冷静で、無表情。動じることがなく、無駄な動きもない、落ち着いた雰囲気のある人だった。
それと同時に、何を考えているのかいまいち分かり辛そうで……あまり気が合いそうにはなかった。



「初めまして。高原 樹と申します。本日はお会い出来て大変光栄です。よろしくお願いいたします」

挨拶をしてもらっても、彼の無表情は変わらない。
話し方も何だか台本の棒読みみたいで、感情が一切伝わってこない。


まあ、私だってこのお見合いはほぼ義務心のみで足を運んだんだ。そこは樹さんも同じだろう。
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