クールな婚約者との恋愛攻防戦
その日の夜。
約束していた通り、仕事帰りに一度家に帰宅してきた樹君の車に乗り、待ち合わせの場所へと向かう。

向かう場所は、都内のレストランとだけ聞いていた。


「あ。このホテル、前から気になってたところだ」

到着したのは、都心にそびえ立つ四十階建ての高級ホテル。
ここのフレンチレストランで予約を取っているらしい。


車を停止させると、樹君が運転手席側から助手席側へとやって来て、ドアを開けてくれる。


ブルーの膝下丈ワンピースの裾に気を付けながら、カツンとヒールを鳴らして車を降りた。

樹君のご友人の方のお祝いと、私のことも紹介してもらうということだったので、カジュアル過ぎる格好は避けてきた。



ご友人達とはホテルのラウンジで待ち合わせになっているらしく、樹君と共にそちらへ向かう。


広くて煌びやかだけれど落ち着きのあるラウンジ。
足を踏み入れ、辺りの装飾を見渡していると「樹!」と彼の名前を呼ぶ女性の声がどこからか聞こえてきた。


声がする方へ二人で振り向くと、白のブラウスに薄いピンクの上品なスカート姿の女性と、その隣に並ぶスーツ姿の男性が、私達の方へと歩いてきた。
< 51 / 79 >

この作品をシェア

pagetop