クールな婚約者との恋愛攻防戦
すると、電話を終えた樹君が席に戻ってきた。

樹君にもこの件について追及しようかと思ったけれど、すぐに藍実さんの旦那様も戻ってきたので、それは出来なかった。

藍実さんの旦那様も、この二人の関係については何も知らない様子だから……私の口からは言えなかった。



その後は、何事もなかったかのように藍実さんが笑顔で別の話題を振っていた。


何でそんな顔が出来るの? と、私は怒りの感情が芽生えていたけれど、その場では必死に耐えた。


……でも、藍実さんに対しての怒りより、樹君に対する怒り……いや、

悲しみの方が大きかった。


私が料理を頑張ってるって褒めてくれたことも、観覧車でキスをしてくれたことも、全部嘘だったんだなんて信じたくない。
信じたくないけれど……藍実さんの発言からは、そうとしか思えなかった。
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