クールな婚約者との恋愛攻防戦
その後、ディナーを終え、四人で一階のラウンジまで戻ってきた。


藍実さん達はホテルの前にタクシーを呼ぶとのことだったので、そこでお別れした。



ホテルを出て、樹君の車に乗り込んだ。

藍実さん達と別れてからずっと黙り込んだ私を不審に思ってか、樹君が「どうした?」と尋ねてくる。


「いつも鬱陶しいくらいに喋ってる奴が無言だと、調子狂う」

樹君はいつもの調子でそう言っているだけなのだけれど、今日はその発言に心底腹が立つ。


「いつも、鬱陶しいって思ってるんだ?」

「え? 何怒ってんだよ。言葉のあやだろ」


何が言葉のあやなの。


……浮気してるくせに。



そもそも、浮気とすら思っていないのかもしれない。
本命は藍美さんで、私に対しては何の感情もないから、何の問題もないって思っているのかもしれない。


……何よそれ。



「……私の実家寄ってもらってもいい?」

「え、今から行くのか? もう二十二時だぞ」

「いいから!」


いつもと明らかに様子の違う私に樹君も戸惑ったのか、ひとまずそれ以上は何も言ってこなかった。

無言で車を実家の方へ走らせてくれる。
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