クールな婚約者との恋愛攻防戦
え? と彼に振り向くと、樹君は少し照れた顔をしながらも、真っ直ぐに私を見つめている。



ーー苺が好き。


確かに、彼の前でそう言ったことがあった。ただし、お見合いの席で、一度だけ。


あんな何気ない一言を、覚えていてくれたの?



「……お花も、私が好きな色だよ。好きな色は言ったことないのによく分かったね」

「こういう色の持ち物が多いからな、お前は」

「そっか」


……樹君は私になんてほぼ興味ないと思っていた。
だけど実際は、持ち物までよく見てくれていたんだ……と小さく感動を覚える。



でも、何で?
形だけ結婚する相手のことなんて、そこまで見なくてもいい。仮に見ていたとしても、


「これ、私の為に用意してくれたんだよね?」

明らかに私を喜ばす為の用意を、ここまでしてくれる理由が見付からない……。



「……すぐに迎えに行かなくて悪かった。お前にとって頭を冷やす時間が必要かと思ったし、色々準備もあったしな」

準備? 準備とは、このケーキや花の準備ということ?
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