クールな婚約者との恋愛攻防戦
「……何で? 確かに、どうせ結婚するなら楽しい方がいいとは言ったけど、仕方なく夫婦生活を送る為にここまでしてくれたってこと?」


私が聞くと、樹君はハア、と溜め息を一つ吐く。


そして。



「言い訳をするつもりはないが、話は聞いてくれ。というか、そもそも言い訳しなければならないことも何もないんだけどな」

「え……?」

「あ、でも愛梨が誤解しても仕方ない流れだったとも思っている。とりあえず座ってくれ」

彼に促され、花びらが綺麗に散らばったソファの上に一緒に腰をおろした。



「まず、俺と藍実の関係だが、陰で付き合っていると誤解しているだろうけど、そんな訳ないからな。ちなみに、昔付き合ってたとか、そういう事情も一切ない」

「え、本当にただの友達?」

ああ、と樹君はきっぱりと言い放つ。


「まあ、女の友人の中で一番仲が良いのは確かだけど。大学生の頃、俺の友人と藍実が付き合っていたことがあったんだよ。その時に、事あるごとに藍実から色々相談されてて、それがきっかけで今も仲が良いって感じかな」

「そ、そうだったんだ」
< 67 / 79 >

この作品をシェア

pagetop