クールな婚約者との恋愛攻防戦
「まだ、ちゃんと用意してなかったからな。
藍実の相談に乗る代わりに、どんな婚約指輪を買うか、俺の方も相談に乗ってもらってたんだ。こういうのは、女性目線の意見があった方がいいと思ったし」

「婚約指輪って……私に?」

「他に誰がいるんだ、馬鹿」

「……っ」


馬鹿って言われたのに、嬉しい。
だって、まさか、こんな準備してくれていたなんて、夢にも思わなかった。


「……あ。さっき言ってた準備って、このこと?」

「ああ。藍美に相談に乗ってもらってたとはいえ、お前に似合いそうな指輪がなかなか決められなくて、遅くなってしまった」


確かに樹君、こういうの選ぶのとても得意そうには見えない。
それどころか、何となくで適当に決めてしまいそうな気もするのに、私の為に真剣に選んでくれたんだ……。

どうしよう。涙が出そうなほどに、嬉しい。



「……でも、それなら何もあんな深夜に電話しなくても良かったのに」

日中の電話だったら、たとえコソコソしていたとしても、私だってここまでは疑心暗鬼にならなかったかもしれない。
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