クールな婚約者との恋愛攻防戦
「そうでしたか。ずっとつまらなそうにしているから、このお見合いが不服なのかな、と」

「どうせ結果が変わらない見合いなら、楽しむ必要もないだろ」


……ああ、なるほどね。そういうことか。

まあ、何も文句はないけれど。



「私は真逆の考え方で、どうせ結果が変わらないなら少しでも楽しんだ方がいいと思うんですよ」

「へえ、そう」

「ところで、私もため口にしてもいいですか?」

「……好きにしろ」

「うん。あ、でも年上の方だったら敬語の方がいいかな? 樹さんって、何歳です?」

「二十六歳――って、事前に書類送っただろ。見てないのか」

「見てない」

「はあ?」


完全に呆れた顔でそう答えると、樹さんはくるっと背を向け、再び足を進めて橋を渡り終えてしまう。

怒った?

その場に立ち止まったまま彼の様子を伺っていると、樹さんがゆっくりとこちらへ振り向く。



……その表情は。




「……変な奴」



一瞬だけど、確かに、笑顔だったのだ。
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