私たちにできるだけ長いラストノートを
はっきりとこの時からというのは思い出せないけど、ここ半年で変わった。
いや、本当はもっと徐々に緩やかに変わっていたのかも知れない。
最初は彼から触れてくれた<愛情表現>が、お互い社会人になってから変わった。
余裕がなくなってだんだん<習慣>になって、今や<作業>でしかなかった。
それでもやめないのは、おそらくそこから始まった恋だからだ。
でも、もはや<作業>と化した行為に何の意味があるの。
そして今更「好き」なんて言っても、それは私たちらしくない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もうすぐ付き合って四年という頃、彼の残業が多くなり、すれ違いの生活が始まった。
そんなある日、帰ってきた彼からミドルノートの匂いがした。
どこかでつけ直している?という疑念が生まれた。
こっそり彼のカバンの中を確認したら、かわいらしいピンクのアトマイザーが一つ入っていた。
香水を持ち運ぶ先が、香水をつけ直す場所が、彼にある。
その事実より、こんなことすら香水で気が付いてしまうことに動揺した。
彼がどこかに寄り道していることより、心変わりしていることより、他の誰かにその香水をつけているのかも知れないと思ったら猛烈に嫉妬した。
彼が、私に興味をなくし始めていることにはもっと前から気付いていた。
香水の趣味以外、ほぼ重なるところの無い私たちは最初は新鮮で楽しかった。
でも徐々にその違いがネックになっていたことに気が付かない程、バカではなかった。
ラストノートと同じだ。
そう、心のどこかで信じていたかった。
でも、私たちはとっくに匂いを失っていたのかも知れない。
一度つけても何度もつけ直さなくてはいつかは消えてしまうのに。
私たちはそれをしてこなかった。
いや、本当はもっと徐々に緩やかに変わっていたのかも知れない。
最初は彼から触れてくれた<愛情表現>が、お互い社会人になってから変わった。
余裕がなくなってだんだん<習慣>になって、今や<作業>でしかなかった。
それでもやめないのは、おそらくそこから始まった恋だからだ。
でも、もはや<作業>と化した行為に何の意味があるの。
そして今更「好き」なんて言っても、それは私たちらしくない。
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もうすぐ付き合って四年という頃、彼の残業が多くなり、すれ違いの生活が始まった。
そんなある日、帰ってきた彼からミドルノートの匂いがした。
どこかでつけ直している?という疑念が生まれた。
こっそり彼のカバンの中を確認したら、かわいらしいピンクのアトマイザーが一つ入っていた。
香水を持ち運ぶ先が、香水をつけ直す場所が、彼にある。
その事実より、こんなことすら香水で気が付いてしまうことに動揺した。
彼がどこかに寄り道していることより、心変わりしていることより、他の誰かにその香水をつけているのかも知れないと思ったら猛烈に嫉妬した。
彼が、私に興味をなくし始めていることにはもっと前から気付いていた。
香水の趣味以外、ほぼ重なるところの無い私たちは最初は新鮮で楽しかった。
でも徐々にその違いがネックになっていたことに気が付かない程、バカではなかった。
ラストノートと同じだ。
そう、心のどこかで信じていたかった。
でも、私たちはとっくに匂いを失っていたのかも知れない。
一度つけても何度もつけ直さなくてはいつかは消えてしまうのに。
私たちはそれをしてこなかった。