俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

 普段は感情を表に出すことがなかなかできないのに、圭太君の前では自然とうれしい気持ちが顔に出ていたようだ。

「ありがとう。そんなこと久しぶりに言われたよ」

 純粋な目を向けられて言われると恥ずかしい。照れ隠しするように早口でまくし立てると、圭太君は力強い声で繰り返し言った。

「瑠璃ちゃんはかわいいよ? 笑った顔はとくに。これまで瑠璃ちゃんと出会ってきた男の子に言われなかった? だったらみんな、見る目ないね!」

 海外育ちだからだろうか。圭太君ってば女の子が言われて喜ぶ言葉を熟知しているようだ。

「えっと……ありがとう」

「瑠璃ちゃん、本当のことなんだからお礼を言うことないからね?」

 力強い声で言われ、タジタジになる。

 でもそっか。私……圭太君の前では笑えたんだ。自分では気づけなかっただけで、ニューヨークにいる間に少しは感情を表に出すことができるようになったと思いたい。
 そうであったら、日本に戻っても昔のように人間関係に悩むことも減りそうだから。

 その後、圭太君は私にいろいろなことを聞いてきた。何歳なのか、ニューヨークではどこに住んでいたのか。好きな食べものや嫌いな食べもの……。

 私もまた聞かれたことと同じことを圭太君に質問した。食事をしながらも楽しく話をして、仲良く寄り添い仮眠を取って、フライト時間はあっという間に過ぎていった。
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