俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「今日はありがとうね。できるだけアルコール度数が低い酒を社長に勧めてくれたり、料理を運んでもらうタイミングも注意してもらったり。……社長も瑠璃ちゃんをすっかり気に入っていたよ。優秀な秘書ですねって」

「そんな……」

 そんなことない、まだまだだ。現に最近の私は勤務中にもかかわらず、仕事以外のことを考えている時もあるのだから。

「謙遜しないでよ。本当にいつも瑠璃ちゃんには感謝しているんだ。俺がのびのびと仕事に集中できているのは、全部瑠璃ちゃんのおかげ。……だからこうしてカッコ悪いけど、甘えたくなるのかも」

 一呼吸置き、彼は続ける。

「昔からどうしても父さんの息子として見られ、窮屈な毎日だった。……大きくなればなるほど、人の醜い部分をたくさん見てきたよ。父さんにも言われたが、きれいごとだけでは生き抜けない世界だから。次第に誰に対しても疑心暗鬼するようになり、次第に表情ひとつでその人がどんな気持ちなのか、なんとなくわかるようになった」

 そうだったんだ。……秘書として働いていると、副社長の言うきれいごとだけでは生き抜けない世界という意味が理解できる。
 時には裏で駆け引きをして、物事を進めることもあるだろうから。
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