俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 副社長はなにを言っているのだろうか。こんな私をかわいいだなんて。

「可愛げないとはよく言われますが、かわいいなんて言われたことありませんから」

 そうだよ、そんなもの好き、そういない。

「なに? 瑠璃ちゃん、誰かに可愛げないなんて言われたの?」

「それはっ……」

 みるみるうちに副社長の表情は険しさを増していく。

「もしかして元彼とか?」

 言い当てられ、思わず目を見開いてしまう。すると確信を得た副社長は眉をひそめた。

「そうか、付き合っていたやつにそんなことを言われたのか。……だったらそいつはバカだな。瑠璃ちゃんのかわいさに気づかなかったんだから」

 そう言うと彼はそっと私の手を握りしめた。

「瑠璃ちゃんの魅力は俺だけが知っていればいい。そうすれば俺以外の男が、好きになることはないだろ?」

 得意げに言われ、じわじわと顔が熱くなる。明かりが灯っていない車内でも気づかれ、彼は柔らかい笑みを零した。

「ほら、そういう顔もだめ。……初対面のツンとした表情もいいけど、こうして俺の言葉ひとつで照れる顔のほうがいいな」

 クスクスと笑う副社長に、心臓が壊れそう。
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