俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「私と親交のある者の娘さんでね、素敵な方なんだ。東雲君にも話は通しておいたから、後ほど渡してくれ」

「……かしこまりました」

 どうにか返事をして社長を見送ったものの、ドアの前から動けそうにない。

 だってお見合いだなんて……。それに副社長も知っているということは、お見合いすることを受け入れたってことでしょ?
 そう遠くない未来に、こんな日がくると予想していた。だから私は自分の気持ちを伝える道を選ばなかった。

 やっぱり正解だったじゃない。……それなのに、どうしてこんなに落ち着かないんだろう。
 お見合いをしたらすぐに婚約して、結婚……という流れになるのだろうか。でも副社長も三十歳だもの、結婚していてもおかしくない年齢だ。その可能性も十分あり得る。

 副社長が自分に見合った人と結婚する未来を覚悟していたはずなのに、実際にその時がくるんだと思うと、胸が痛くて苦しい。

「瑠璃ちゃん……? どうしたの? そんなところで立ち尽くして」

「あ、いいえ、なんでもないです」

 すぐに振り返ると、だいぶ時間が経っていたようで、web会議を終えた副社長が、不思議そうに私を見つめていた。
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