俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「離すわけないだろ? あんなことを言われて」

 反対の手が私の腰に回り、グッと引き寄せられた。至近距離で私を見る副社長は苦しげに顔を歪ませる。

「どうして瑠璃ちゃんは俺に見合いをしてほしくないの? ……泣いている理由はなに?」

 そんなの言えるわけない。副社長のことが好きだからだなんて言えないよ。
 固く口を結んだ。

「最近ずっと感じていたんだけど、気のせいだと言い聞かせていたことがある。……もしかして瑠璃ちゃんも、俺のことを好きになってくれた? だから見合いしないでほしいって言ったのか?」

「ちがっ……!」

 慌てて反論しようとしたところでハッとなる。これでは認めているようなものだと。
 副社長は私の態度を見て確信を得たようで、畳み掛けてきた。

「だったらどうして言ってくれなかったんだ? 俺は何度も言ったはずだ、瑠璃ちゃんのことが好きだと」

「だってそれはっ……」

 そこまで言いかけた時、遠くのほうから数名の笑い声が聞こえてきた。
 そうだ、ここは廊下。上層階とはいえ、いつ誰が通るかわからない。

「続きは中で聞かせてくれ」

「あっ……」
< 126 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop