俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 副社長室に戻ったものの、ずっと腕は掴まれたまま。静かな室内で彼は真剣な面持ちで私を見据えた。

「自惚れてもいい? 瑠璃ちゃんも俺と同じ気持ちだと」

「……っ」

 伝えないつもりだったのに、な。真っ直ぐに見つめられたら嘘などつけそうにない。
 ゆっくりと頷くと、副社長は間髪入れずに言った。

「いつから? それに気づいてすぐ言ってくれなかったのはなぜ?」

 どうしよう、なんて言えばいい? でも気持ちに気づかれてしまった以上、嘘をつけないよ。……それに。
 以前、圭太君に言われた言葉を思い出す。

『あのね、マムがよく僕に言ってたの。自分の気持ちに正直に生きなさいって。好きなことをたくさん見つけてそれをやって、好きな子にはちゃんと好きって言わないとだめだって。そうしなきゃ幸せになれないんだよ?』

 そうだよね、自分の気持ちに正直に生きないと。それに私もできるのなら素直になりたい。幸せになりたいよ。

 いいかな、後先考えず今だけは自分の気持ちに正直になっても。目の前にいる好きな人に想いを伝えてもいい?

 副社長への好きって感情は大きくなり、素直な想いが口をついてでた。
< 127 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop