俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 だけどそっか、恋人……。つ、つまり彼氏ってことだよね?
 今さらながら、そんなことでまた恥ずかしくなる。

「もう、なにやってるのよ」

 まだ源君問題が解決していないし、副社長だって今が一番忙しい時だ。それに昨日は教えてもらえなかったけれど、建前上だけお見合いをするって話も気になる。浮かれている場合じゃないよね。

 気合いを入れて準備をし、家をあとにした。



 いつもの時間に到着し、エレベーターから降りて秘書課へと向かっていると、入口には足踏みをして落ち着かない様子の細川さんの姿があった。

「おはよう、細川さん」

 不思議に思いながらも声をかけると、私を見た彼女は目を丸くさせたあと、勢いよく駆け寄ってきた。

「おはようじゃないわよ、おはようじゃ!」

「え、あっ……ちょっと細川さん!?」

 私の腕を掴み、そのまま彼女はどこかへ足早に向かっていく。

「どこに行くの? ミーティングが始まるわよ?」

「ミーティングどころじゃないわよ! 大変なことになっているっていうのに、あなたはなに呑気に出勤してきてるのよ!」

 話が見えなくて、頭の中にはハテナマークが並ぶ。

「なにかあったの?」

「あったから私がこんなに慌てているんでしょ?」
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