俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 廊下に人の気配はなかった。遠くから話し声が聞こえてきたから、副社長室にすぐに戻ったもの。

「この写真を撮ったのは、源君よ」

「……源君が?」

「えぇ。昨日のうちに社長に報告がいって重役たちにも回り、副社長は今、会議室に呼び出されて事情を聞かれているところ」

「……っ! それを早く言ってよ!」

 これは完全に誤解だ。私が勝手に泣いて副社長室を飛び出しただけなのに。
 急いで会議室へ向かうと、すぐに細川さんもついてきた。

「ねぇ、もしかしてこれが源君の本当の目的なのかな」

「わからない」

 でも仮にこれを問題に起こして、彼を副社長職から退けられたとしても、源君にどんなメリットがあるというのだろうか。本当の目的はいったいなに?

「木名瀬さん、会議室に乗り込んであなたにできることがあるの?」

「事情を説明する。副社長はなにも悪くないもの」

「そうだとしても、写真がある以上、頭のお固い重役たちがそう簡単に納得するとは思えないんだけど」

 細川さんの言う通り、重役たちを納得させるのは難しいと思う。それでも黙って結果が出るまで待つことなどできない。
< 137 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop