俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 会議室前で一度足を止め、少しだけドアを開けて中の様子を盗み見る。すると社長をはじめ、重役たちの前に副社長が立たされていた。

「東雲君、もう一度聞く。この写真はいったいなにかな?」

「どう見てもセクハラだろう」

「木名瀬君は秘書課の中でも優秀な子だ。そんな彼女にこんなことをするなんて……大問題だぞ、これは!」

「聞くところによると東雲君は普段から木名瀬君のことを、下の名前で呼んでいたそうじゃないか! それも一種のセクハラだ」

 次々と言葉を浴びせる重役たちに、副社長は固く口を閉ざしたまま。

「どうしてなにも言わないんだ? 反論する余地もないといったところか?」

 そう言うと社長は深く息を吐き、厳しい口調で言った。

「こんな問題を起こされては、いくら東雲君といえど庇えきれん。……申し訳ないが、副社長職を辞任していただこうか?」

 辞任って……嘘でしょ? どうして副社長はなにも言わないの?
 すると一緒に中の様子を窺っていた細川さんが小声で言った。

「やっぱりそうなるか。普段から重役たちは、副社長の就任をよく思っていなかったから」

「そんな……」
< 138 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop