俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 私だって圭太君との出会いを大切にしたい。でも私も圭太君も、それぞれの生活がある。
 会う約束をしても守れないかもしれない。そうなった時、余計に圭太君を傷つけることにならないだろうか。でも今、こんなに私にまた会いたいと言ってくれている。だったら必ず約束はできないけれど、「また会おう」って言うべきなの?

 どちらが正解なのかわからず、なにも言えなくなる。すると彼も膝を折り、圭太君の頭を優しく撫でた。

「圭太、瑠璃ちゃんはな。お前のためを思ってここでバイバイしようって言っているんだぞ」

「えっ?」

 顔を上げた圭太君に彼は続ける。

「瑠璃ちゃんには瑠璃ちゃんの生活がある。お前だって明後日から新しい学校に通うだろ? 勉強に新しい友達との遊びにと忙しくなるんじゃないか? 瑠璃ちゃんは、圭太のためにも守れない約束をしないほうがいいと思っているんだぞ」

 驚きを隠せない。私、彼に自分の気持ちを一言も話していないのに……。すべて代弁してくれた。

 どうしてわかったの? 不思議でジッと見つめてしまう。すると彼は小声で囁いた。

「俺、大抵のことなら人の表情ひとつ見ればなんとなくわかるんだ、その人の気持ちとか、考えていることが。……さっきの、正解だった?」
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