俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「瑠璃ちゃんとの出会いが運命で、これっきりにならないことを願っているよ」

 連絡先を交換するのは、あくまで圭太君と連絡を取る手段に過ぎない。決して彼とまた会いたいからではない。
 だけどここでムキになって言い返すのは、子供がすること。冷静になれと自分に言い聞かせた。

「そうですね。……では仕事があるので、これで失礼します」

もらった名刺をバッグにしまった。

「それじゃ圭太君、またね」

「うん、またね瑠璃ちゃん! 僕、がんばるから瑠璃ちゃんもお仕事がんばってね!」

「ありがとう」

 圭太君と別れを惜しんでいると、彼が割って入ってきた。

「俺もまた瑠璃ちゃんに会えるのを、楽しみにしているね」

 手をひらひらさせて言う彼に、顔が引きつる。
 圭太君との素敵な出会いが、彼に台無しにされた気分だ。圭太君との関係が続いていくと、もれなく彼との関係も続いていくのかと思うと憂鬱になる。……それでもこの出会いに感謝したい。

 ふたりと別れて空港から外に出ると、太陽が照りつけていた。

 久しぶりの日本だ。今年のお正月は帰国できなかったから、約二年ぶり。

 残念ながら日本に友人と呼べる存在はいないけれど、大好きな家族はいる。電話では頻繁に連絡を取り合っていたけれど、四年ぶりにまた一緒に暮らせるのは素直にうれしい。
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