俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「さすが瑠璃ちゃん。ちょうど飲みたいなーって思い始めていたところなんだ」

「そう思いましてお持ちいたしました。……それといい加減、その名前呼びはやめていただけませんか?」

 机上に置きながら言うと、さっそく副社長はおいしそうに飲む。

「うーん……父さんお墨付きなだけある。よく酸味の強いコーヒーが飲みたいことまでわかったね。もう俺は瑠璃ちゃんがいないと、仕事できなくなりそうだよ」

 言っているそばからまた名前呼びされ、ため息が零れる。
 何度も『木名瀬と呼んでください』って言っているのに、一向に直してくれない。

「あ、このクッキーも昨日俺が食べたいって言っていたやつじゃん」

「はい、そのようにおっしゃっていたので用意しました」

 すると副社長は私を見て目を瞬かせた後、声を上げて笑った。

「アハハッ! もう本当に瑠璃ちゃんってば、どこまで完璧なのさ」

 こ、これは褒められているのだろうか? それとも貶されている? 大笑いしながら言われると、どう反応したらいいのかわからなくなる。

 ジッと見ていると、私の視線に気づいた彼は慌てて手を左右に振った。

「別にバカにしているわけじゃないからね? 怒らないで」

 怒ってなどいないんだけどな。やっぱり私は普通にしていても怒っていると勘違いされてしまったようだ。
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