俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「怒ってはおりません。元々こういう顔なのでお気になさらずに。それよりお渡しした資料にはお目通しいただけましたか?」

 肝心の仕事状況を確認すると、副社長はグーサインを出した。

「もちろん。瑠璃ちゃんの作ってくれた資料はわかりやすくてすんなり頭に入ってきたよ」

「……恐れ入ります」

 満面の笑みで褒められると、うれしくて手にしていたトレーを胸の前でギュッと抱きしめた。

 ちらっと机上を見ると、私が作った資料が散らばっていて、所々付箋も貼られている。こういうのを見ちゃうと、少しでも役に立てたと思えてうれしくてたまらない。

 副社長は就任したばかりでハードなスケジュールながら、まったく疲れた顔を見せない。

 普段はこんな軽い……いや、陽気なお方だけれど、重役たちの前では凛としていて、周囲を寄せ付けない空気を出す。それに臆することなく、自分の意見をしっかり言う。若いながら、副社長としての威厳があると専らの噂だ。

 その反面、社内ですれ違う社員には気さくに声をかけている。このあと予定している社内視察も、彼が言い出したものだった。
< 25 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop