俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 入社以来、なにかとライバル視されてきて、こうやって嫌味を言われることも日常茶飯事だった。だけど決して根っからの悪い人ではない。その証拠に……。

「ねぇ、もう少し愛想よくしたらどう? あなた、戻ってきてまだ一週間しか経っていないのに、社内でなんて言われているか知ってる? 〝氷のサイボーク〟なんて呼ばれているのよ?」

 なるほど、氷のサイボークか。それはまた愉快なあだ名をつけられたものだ。

 感心していると、細川さんは急に慌て出す。

「い、言っておくけど、私がつけたわけじゃないわよ? だから私に怒られても困るから!」

 また怒っていると勘違いされてしまったようだ。

「怒っていないけど?」

「嘘つかないでよ、完全にさっき私に怒りを向けたでしょ!?」

 ギャーギャー騒ぎながら、私の席までついてくる細川さんは、入社当時からなにかとみんなに避けられてきた私のことを、嫌味を言いながらもさり気なく気にかけてくれていた。

 さっきの『愛想よくしたら』っていうのも、彼女なりに秘書課内で浮いている私を心配してだと思う。
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