俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「なにより木名瀬さんは秘書の鏡じゃないですか。感情の浮き沈みなく、いつも同じテンションで過ごし、年齢や職種、役職、性別など関係なく接することって、簡単なようで難しいと思いませんか? さすがニューヨーク本社で社長の秘書を務められ、こうしてご子息の副社長の秘書に抜擢されたお方ですよね」

 なんて言いながらみんなに同意を求める彼に、やっぱり違和感を覚える。

 なにかと持ち上げてくるのよね、源君。ちょっと嫌味に聞こえるくらいに。なにか裏がありそうで身構えてしまう。

「源君、私のことを過大評価しすぎよ。私はただ、自分の仕事を全うしているだけだから」

 チラッと彼を見て言うと、一瞬笑顔が消えうせた。しかしすぐにまた爽やかに笑う。

「では今度ぜひ秘書としての心得をご伝授ください」

 ちょうど課長が来てミーティングが始まったものの、源君のことが気になる。さっきも一瞬だったけれど、笑顔が消えたもの。やっぱりなにかある気がしてならない。

 そもそも私に真正面から話しかけてくる人は、そういない。同性にはもちろん、異性にも大抵はこの顔のせいで避けられてきたもの。

 かと言って、その裏がなんなのかわからない。源君が私に近づくメリットはいったいなんだろうか。
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