俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 何度か一度食事に行き、本人になにが目的なのかズバッと聞こうかと思った。だけど勘というか……。彼とふたりで出かけるのはやめたほうがいい気がして、断り続けている。

 細川さんは相変わらず『源君、木名瀬さんにベタ惚れね』なんて見当違いなことを言っているけれど、それだけは絶対あり得ない。

 定かではないけれど、源君は私になにか探りを入れようとしている気がするんだ。ニューヨーク本社にいた時の話を聞きたがるし、仕事について語り合いたいなんて言っているから。
 でもいったいなにを? 源君がそこまでして知りたいことってなに?

「ねぇ、そろそろなにかしら対処したほうがいいんじゃない?」

「えっ?」

 ミーティングを終え、副社長室に向かう準備をしていると、細川さんがボソッと警告してきた。

「源君よ。……あなた、社内中でずいぶんと好き勝手言われているわよ?」

 それはもちろん知っている。現についさっきも耳にしたから。

「いいわよ、好き勝手言われても。仕事に支障はないもの」

「一部では副社長の秘書という立場を利用して、嫌がる源君に迫っているって言われているのに?」

「なにそれ」

 手を止めて彼女を見ると、小さく息を吐いた。
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