俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 彼女はこれまで出会ってきた友人たちとは違う。ちゃんと私自身のことを見てくれていると思うから。
 だけどすぐに浮足立っていられないことに気づく。
 
そうだ、細川さんがランチに誘ってくれたのは源君のことがあるからだ。それに彼女の言っていたことが本当なら、私のせいで副社長にも迷惑をかけることになる。

 しかしなんて噂が流れているのだろうか。副社長に色目を使っているビッチ女って……。ひどい言われようだ。

 副社長室にはまだ彼の姿はなく、今日中に確認してもらいたい資料を机の上に置いた。

「十一時過ぎに来客予定だから、準備しておかないと。そういえばお茶菓子はストックがあったかな」

 ブツブツと呟きながら給湯室へ向かう。
 勤務中だし、邪念は払おうとしても、やっぱりこうして黙々と作業をしていると思い出してしまう。

 どうすれば噂を消すことができるのだろうか。仕事に影響がない限り、そのうち噂されることはなくなるだろうと高を括っていたけれど、そうもいかないようだ。

 なぜ源君との噂だけだったのに、副社長とのことまで言われているのか……。人の噂話をしてなにが楽しいのだろう。

 昔からクラスメイトが他の子の悪口を楽しそうに話しているのを見て、理解に苦しんだ。そのくせその子と表面上は仲良くしているんだから。
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