俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 副社長は私のことを知りたいと言っていたけれど、私のすべてを知ったら嫌にならないだろうか。

 自分で言うのもあれだけど、面倒な性格をしていると思う。うまく感情を表に出すことができないし、素直になることが苦手。物事を客観的に捉え、感情的になることはなく、いつも冷めていると思うもの。
 きっと副社長もそのうち、昔付き合っていた恋人のように思うはず……可愛げのない女だって。

 昔の苦い記憶を思い出し、胸が痛む。

 やだな、もう忘れたはずでしょ? 仕事に生きるって決めたのに、どうしてまだ鮮明に覚えているのだろうか。……副社長に好きって言われたから? 恋愛はしたくないのに、どうして?

 時計を見つめたまま茫然としていると、ドアが開いた。

「おはよう、瑠璃ちゃん」

「あ、おはようございます」

 慌てて立ち上がり、副社長を出迎えた。

「本日、お目通しいただきたい書類を机上に置いておきましたので、来客前にご確認よろしくお願いします」

「了解。悪いんだけど珈琲お願いしてもいい? まだ少し眠くて」

「わかりました、お部屋にお持ちしますね」

「よろしく」

 自室に入っていく副社長を見送った後、肩を落としてしまう。

 なにやっているのよ、仕事中にボーっとするなんて。
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