俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 急いで珈琲をカップに注いで副社長室に持っていった。ドアをノックして入ると、私が置いた書類に目を通している。そっとカップを置く。

「ありがとう。……瑠璃ちゃんが淹れてくれる珈琲は特別に美味いから、やる気が出るよ」

「……恐縮です」

 こうしてサラリと褒められると、普通に「ありがとうございます」って言えばいいのに、毎回どう反応すればいいのか迷う。
 ずっと意識してしまっている。……副社長の言動ひとつひとつに。

 私、本当にこの人に告白されたんだよね? 東雲社長のご子息で、仕事に対する姿勢には尊敬できて、カッコいいこの人に。

 はっきり言われたはずなのに、いまだに信じられない。それでも意識している自分がいて……。いつもの自分らしくいられなくなる。

 そもそも仕事中にこんなことを考えるなんてあり得ない。勤務時間になったら、しっかり切り替えることができていたのに。

「失礼します」

「待って」

 自席に戻って落ち着こうと思い、踵を返したところで呼び止められた。

「なんでしょうか?」

 平静を装って尋ねると、副社長は書類から私に目を向けた。
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