俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 間髪入れずに言われた言葉に頷くと、彼は深いため息を零しながら椅子の背もたれに寄りかかった。

「やっぱりな、そんなことだろうと思った。それで周りは嫉妬で瑠璃ちゃんのことを悪く言っているわけだ」

「……おそらくそうだと思います」

 歯切れの悪い返事をすると、副社長は腕を組んで考え込む。

「俺の耳にも入るくらいだ。おもしろおかしく言われているんじゃないか? なにか対策を練らないと、噂はひとり歩きするばかりだぞ?」

 副社長の言う通りだと思う。彼はまだ知らないようだけど、源君との話だけではなく、副社長とのことまで言われているし。

「すみません、早急に対処いたしますので。……ご迷惑おかけしてしまい、申し訳ありません」

 頭を下げると、なぜか副社長は目を瞬かせた。

「迷惑だなんて思うわけないだろ? むしろ頭にきてるよ。俺の優秀な秘書が悪く言われているんだから」

「副社長……」

 そんな風に言ってもらえるなんて……。どうしよう、うれしい。

「それにおもしろくない。俺とデキているんじゃないかって話ならともかく、他の男と噂されているんだから」

「いえ、それはそれで大変困ります」

「どうして? 真実だろ?」

「真実ではありません」

 いつの間にか論点がずれていることに気づき、咳払いをした。
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