俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「お疲れ様です。珍しいですね、この時間に木名瀬さんがいるなんて」

「えぇ、ちょっと仕事が残っていたから」

 オフィスにふたりっきりになるのは初めてで、妙に身構えてしまう。

「ちょっとってことは、もう少しで上がれるんですよね? じゃあ今日こそは付き合ってください」

「ごめん、今日はこのあと予定があるから」

 さらりと断ると、なぜか源君はゆっくりと私との距離を縮めてくる。

「ずっと思っていたんですけど、もしかして木名瀬さん、俺のことを警戒しています?」

「えっ?」

「だってこんなに誘っているんですから、一度くらい付き合ってくれてもいいじゃないですか。俺はただ、木名瀬さんと仕事の話をしたいだけなんですよ?」

 笑顔で言いながらジリジリと近づいてくる彼に恐怖心を抱く。

「仕事の話しなら、会社でもできるでしょ? わざわざ仕事時間外に外で会う必要はないと思う」

 悟られないように平静を装う。
 だけどいい機会かもしれない。ふたりっきりの今、源君が私につき纏う本当の理由を知りたい。どう考えても仕事の話をしたいだけとは思えないもの。

 小さく深呼吸をし、源君と対峙した。

「ねぇ、本当の目的はなに? ただ、私と食事をして仕事の話をしたいわけではないでしょ?」

 遠回しせず、直球で聞くと源君は目を丸くさせた。
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