俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「いいのか? 今、正直に話さなくて。後々後悔することになるぞ?」

「後悔することなんてありませんよ。実際僕は本当になにもしていないんですから」

 悔しいけれど、たしかに源君の言う通り私はまだなにもされていない。それを副社長もわかっているようで、言葉を詰まらせた。
 その様子を見て源君は笑顔で言う。

「それでは僕は失礼します。……木名瀬さん、また明日」

 冷笑を浮かべ丁寧に一礼すると、何事もなかったように源君はオフィスから出ていった。
 張り詰めていた糸が解れ、身体中の力が抜けてしまう。

「大丈夫か?」

「すみません」

 彼に身体を支えられ、どうにか足に力を入れる。

「悪かった、俺がもう少し早く来ていれば……」

 そう話す副社長の手には、私の手帳が握られていた。わざわざ届けに来てくれたんだ。……でもそれがなければ、副社長が来ることはなかった。もし私が手帳を忘れていなかったら、どうなっていたか……!

「大丈夫か? 本当にあいつになにもされていない?」

 心配そうに私を見る副社長に慌てて答えた。
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