俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 急な辞令だったから引継ぎでいっぱいいっぱいで、四年間切磋琢磨してきた仲間たちとの別れを悲しむ余裕もなかった。だからかな、今になって急に寂しさに襲われた。

 昔から人付き合いが苦手だった。自分の気持ちを相手に伝えることがうまくできず、おまけに感情を表に出すのが下手。怒っていると勘違いされることもしばしば。
『もっと愛想よければいいのに』と、言われているのを何度耳にしてきたことか……。

 どんなに勉強ができても、真面目に過ごしていても、愛嬌がなければ周囲には受け入れてもらえない。

 でも海外は違った。それが私の個性だと受け入れてくれたから。
 ここでなら私は、私らしく生きていけると思っていたのに、な。また日本に戻ることになってしまったけれど、うまくやっていけるだろうか。

 不安な気持ちになっていると、圭太君が明るい声で言った。

「じゃあ瑠璃ちゃん、うれしいでしょ」

「――え」

 私の気持ちとは裏腹なことを言うものだから目が丸くなる。すると圭太君はどこか得意気に言った。

「だって家族とは離れて暮らしていたんでしょ? これからはずっと一緒にいられるんだよね?」

「それはそう、だけど……」

 戸惑いながらも答えると、圭太君は笑顔で続ける。

「僕もね、久しぶりにお兄ちゃんと一緒に暮らせるのが楽しみなんだ。……友達と離れちゃうのは寂しかったけど、また絶対会おうって約束しているし、それに日本でまた新しい友達ができるでしょ?」
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