俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「大丈夫です。それよりもありがとうございました」

 お礼を言っていないことに気づき頭を下げる。だけど時間が経てば経つほど、さっきのことが頭に蘇る。

「いや、礼なんていらない。……なにもされていなくても、なにかあったのは事実だろ?」

「……はい」

 顔を上げ、先ほどのことを伝えようとしても、手が震え出す。どうしても頭から離れてくれない。

 怖かった。年下で身体の線が細いし大丈夫だろうと思っていたのに、そんなことなくて……。私、なにもできなかった。

 必死に震えを止めようと両手を握りしめる。それでもなかなか震えが止まらない中、副社長はそっと私の身体を抱き寄せた。

「ごめん、真っ先にこうするべきだった」

「えっ……副社長?」

 私の身体を包み込むと、彼の大きな手が背中や髪を優しく行き来する。

「怖かったよな。……もっと早く助けることができなくて本当に悪かった」

 そんなっ……! 副社長はなにも悪くない。自業自得でもある。なんでも自分でできると思っていた浅はかな自分のせい。
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