俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 今朝の感じだと目的達成は諦めていない気がするから。でも昨日の件に関しては大事にしたくないし、さすがにもう私に接触してくることはないと思う。私も今後は慎重に動けばいいだけ。しかし副社長は不服そうに顔をしかめた。

「わかったよ。だけどもしなにかあったらすぐ報告すること。……あー、でもやっぱり納得いかないな。瑠璃ちゃんは悔しくないのか? こうギャフンと言わせてやりたい!って思わないの?」

「ギャフンって……ふふ、なんですかそれ」

 子供みたいな物言いに思わず笑ってしまう。
 不思議なほどに、ギャフンと言わせたいとは思わないんだよね。秘書課内の空気を悪くしたくないし、なにより心配してくれる人が目の前にいるからかもしれない。

 すると彼は目を皿のようにした。

「今度はどうしましたか?」

 急に黙り込んだものだから眉をひそめながら尋ねると、副社長は表情を崩して首を横に振った。

「いや、なんでもない」

 そう言いながらどこかうれしそうに笑う姿に、首を捻る。

「瑠璃ちゃんがそう言うなら、この件に関して俺はなにも言わないよ。……この件に関しては、ね」

 意味ありげに言うと、副社長は椅子の背もたれに体重を預けた。
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