俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「大丈夫、最後に正義は必ず勝つから」

「どういう意味でしょうか?」

「秘密」

 はぐらかすと、カップに残っていた珈琲を飲み干した。

「ごちそうさま」

 空になったカップを受け取ると、副社長は再三私に忠告してきた。

「さっきも言ったけど、今後はなんでもひとりでできると思わないで、周りに頼ること。でないと、また昨日のような危ない目に遭うからな?」

「……はい、重々承知しております」

 身をもって知ったから。女の私にはひとりで立ち向かえないこともあると。
 素直に認めると、彼は満足げに笑う。

「わかればよろしい。……きっと頼ってほしいと思っているのは俺だけじゃないと思うよ」

 そう言われて頭をよぎったのは、細川さんだった。
 副社長にだけではなく、細川さんにも甘えていいのだろうか。でもきっと、彼の目的を知るためには彼女の力も借りなければ知ることはできないよね。

「もちろん瑠璃ちゃんが一番に頼るのは、俺じゃないとだめだからね?」

 いつもだったらここで「大丈夫です」と言うところだけど、今の私には言えそうにない。
 今後またなにかあったら、きっと私は副社長のことを一番に頼ってしまうと思うから。

 自分の心の変化に戸惑っていると、副社長は思い出したように言う。
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