俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「ごめんなさい」

　素直に謝ると、細川さんは面食らったように目を瞬かせた。

「え、なに？　どうしちゃったの？　あんなに突っぱねていたのに急に素直になっちゃって」

　おばけでも見るような顔をされ、ちょっぴりムッとなる。

「私が素直になったらおかしい？」
　
つい可愛げのないことを言ってしまうと、今度は目を見開いた。

「やだ、なにその反応。なんか木名瀬さんが人間らしくて気持ち悪い」

　人間らしいって……。あんまりな言い方だ。
　だけどそう言われるほど、今の私は自分の感情をうまく外に出すことができているのだろうか。

「だけどまぁ、私は今の木名瀬さんのほうが好きだけどね」

　どこか照れくさそうに言う彼女に、どう答えるのが正解なのかわからなくて言葉が出ない。

　すると余計に言って恥ずかしくなったのか、細川さんはわざとらしく咳払いをした。

「話しが反れちゃったけど、本当に源君をこのまま放っておいていいの？」

「うん。ただ、本来の目的については慎重に探るつもり。副社長に関係しているかもしれないし」

　これ以上彼に迷惑をかけたくないもの。
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