俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 いつの間にか手は止まり、茫然と料理を眺めていると、細川さんがからかい口調で聞いてきた。

「なに~? まるでヒーローのように助けてくれた副社長に恋しちゃった?」

「えっ?」

 こ、恋? 私が副社長に? もう恋愛はこりごりだと思っていた私が?

「え、なにその顔。冗談のつもりで言ったのに、まさか本当に好きになっちゃったの?」

「違うから」

 すぐに否定するものの、動揺を隠せない。それは細川さんにも伝わっているようで、前のめりになってジッと私を見た。

「な、なに?」

 そんなに見られると非常に居たたまれないのですが。

 次第に顔が熱くなる。すると彼女はニッコリ微笑んだ。

「べつにいいじゃない。恋愛は自由だし。それにうちの会社、社内恋愛禁止じゃないでしょ?」

「それはそうだけど……」

「副社長もあの歳で独身なのが、奇跡みたいなものよね。これまでさぞ言い寄ってくる女性は多かったろうに……。木名瀬さん、ウカウカしていたら誰かに取られちゃうわよ!?」

 細川さんの剣幕に圧倒されてしまう。だけど……。
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