俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
「ん? ちょっと待って。私が副社長のことを好きって前提で話していない?」

「違うの?」

「さっきも違うって否定したでしょ?」

 強く言うと「つまらないの」なんて言いながら元に戻り、パクパクと料理を口に運んでいく。

 私が副社長を好きだなんて、あり得ない。……昨日からドキドキしているのは助けてくれたからよ、きっと。

「仕事人間の木名瀬さんより、間違いなく私のほうが恋愛経験は豊富だろうし、恋愛相談ならいつでも乗るわよ?」

「大丈夫、恋愛に関しては細川さんを頼ることは絶対にないから」

 断言すると彼女は首を傾げた。

「なによ、それ。もしかして木名瀬さんってば独身を貫くつもりなの?」

「……そうなるかもしれない」

 私のすべてを知っても、ずっと一緒にいたいと思ってくれる人なんていないはず。副社長だってこれまで付き合った人のように、そのうち私から離れていくよ。
 そうわかっているのに、昔と同じように副社長にも『可愛げのない女』って言われるところを想像すると、ズキズキと胸が痛む。

「まぁ……その考え方には共感するわね。私も今の生活スタイルに満足しているし、本気で好きになれる人と出会えなかったら、独身でもいいと思っているから」
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