俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 びっくりだ。勝手ながら細川さんは結婚願望が強いと思っていたから。
 押し黙っていると、彼女は怪訝そうに私を見た。

「なによ、その顔は。私が結婚を夢見る乙女だとでも思っていたの?」

「いや、えっと……」

 まさにその通りで口籠る。

「失礼ね。……仕事は楽しいし、独身だとプライベートを満喫できるしね。結婚したら生活リズムは完全に崩れるでしょ? そこまでして結婚したいと思える人と出会えなければ、無理して結婚することないというのが、私の考えよ。ひとりでも生きていけるように貯金もしっかりしているしね」

「そう、なんだ」

 私が思っている以上に、細川さんは自分をしっかり持っているようだ。それに比べて私は、過去の傷を理由に恋愛しないなんて、駄々をこねる子供のようで恥ずかしい。

「でもさっきも言ったように恋愛経験は豊富だから、副社長となにかあったら報告しなさいよ?」

「……だから副社長のことは違うって言ってるでしょ?」

「じゃあ今はそういうことにしといてあげる」

 なんて言われ、タジタジになる。
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