俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 本当に副社長はトップに立つに相応しい人だと思う。少しでもそんな彼の力になりたい。

「わかりました。私も今夜はがんばらせていただきますね」

「え、いい、いい! 瑠璃ちゃんは飲まないでね? ひとりはシラフでいないと」

「そうですが……」

 私が飲めば、少しは副社長に飲ませる量を減らせるかもしれないのに。

「とにかくだめ、これは命令。……今夜は社長だけではなく、現場の若い社員たちも来るんだ。瑠璃ちゃんが酔ったらどうなるかわからないのに、他の男の前で飲ませるわけにはいかないから」

 な、にを言って……!

 少しだけムッとして言われた言葉に、身体中が熱くなる。
 隣に座っていなくてよかった。もしそうだったら、ドキドキしているのがバレたかもしれない。

「わかった?」

「は、はい」

 思わず振り返って返事をしてしまったけれど、副社長はホッとした様子。

「ん、よろしい」

 目を細めて微笑まれ、さらに胸は苦しくなる。

 もう、こんな時にドキドキしている場合じゃないでしょ? 副社長にとって今夜は大切な会食なんだ。
 相手方に楽しんでもらい、事がうまく運ぶよう秘書として精いっぱい務めよう。

 前を見据え、気合い十分に会食場所に向かった。
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