俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
 始まった会食の席で、やはり向こうの社長は日本酒をどんどん勧めてきた。注がれるがまま副社長は飲み、彼の飲みっぷりに社長は終始ご満悦。料理の評判もよかった。
 最後まで楽しまれ、「今後とも、よろしくお願いします」と言ってくれた。

「副社長、大丈夫ですか?」

「うん、どうにか」

 社長たちを見送ったあと、すぐに高瀬さんに車を回してもらい乗せた。私は普段、絶対に後部座席に乗らないが、今日ばかりは「失礼します」と断りを入れて乗り込んだ。

「え、瑠璃ちゃん?」

 戸惑う彼にバッグの中からミネラルウォーターを手に取り、差し出した。

「飲んでください」

「あ、ありがとう」

 ゆっくりと動き出した車。
 いつもは私の自宅を先に回ってくれるけれど、今日はそうはいかない。

「すみません、先に副社長のご自宅に向かってください」

「かしこまりました」

 高瀬さんに伝えると、副社長は飲んでいた水を吹き出しそうになりむせた。

「ゴホッゴホッ! え、ちょっと瑠璃ちゃん?」

「本日は私が副社長のことをしっかりお見送りいたします。でないと心配で帰れませんから」

「瑠璃ちゃん……」
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