セイサンしてください
「どこが正当だ」

 今なら、引き返せる。まだ間に合う。
 その無垢であり悪戯な言葉に、笑顔に、仕草に、大人げなくも心を揺さぶられていることを隠しきる自信がある。

「よこしまかな?」
「よこしまだ」

「あっ」

 溶けたアイスが暑さとは裏腹に真っ白な肌にこぼれ落ちる。

「……お前」
「ティッシュとって、タクジ」
「少しは動け」
「動くとシーツ汚れちゃう」
「手のかかるやつ」

 箱ごとティッシュを掴むとベッドに向けて放り投げる。

「危ないなあ。持ってきてよ」
「軽くパスしたろ」
「角があたったらどうするの」
「はよ拭け」

 ティッシュで腕を拭うナツキが、「ウエットティッシュの方がいい」と不満を漏らす。

「洗ってこいや」
「食べ終わったらね」
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