文と芸
 始まりがこれでいいのか?

「ちんちん見せて!」
「……はぁ?」

 二号館二階にある文芸部の部室。清楚で綺麗に整った顔立ちの先輩から唐突に言われた。

「いや、いきなり!」
「ねぇ、早く」
「何このエロマンガ展開!?」

 思考より先に先輩が手を出してきて、竹楼(たけろう)のズボンのチャックを下ろしてきた。
 竹楼。風見 竹楼(かざみ たけろう)はどこにでもいるような高校一年生。整った顔立ちだが、目の下にクマが常にあり冴えない印象がある。
 竹楼は先輩がベルトを外してきてようやく脳が考えを出した。そして竹楼は先輩の手を掴みブレーキを掛けた。
 

「ちょっと、俺はまだ大人の階段は」
「いいじゃない減るもんじゃないし」
「減りますよ。童貞とかチェリーボーイとか初体験とか」
「あら、いろいろ減るのね」
「しかも、言った事全て一瞬で減りますよ」
「あら、それは良いネタになりそう」
「いや、ネタとかいいので本当に止めてくださいよ」

 ネタ狙いの先輩。絶対に嫌な竹楼。貞操掛けた……いやどうでもいいしょうもない戦いはこの後十分くらいは続いた。



「ねぇ、そろそろ見せて」
「絶対に見せません!」

 あれから見せることなく席につけた、先輩が足を竹楼の股間に当てている。

「ねぇ」
「マジで止めてもらっていいですか?」

 頬を染めうつ伏せの竹楼。だが、さすがにイラついてきたので、先輩の脛を強く抓った。

「痛い!」

 先輩は足を引っ込める。

「天罰でも下ったんじゃないですか?それかカメムシか」
「まだ冬じゃないよ」
「でももう秋じゃないですか」

 秋。季節の色が茶色など大人しい色になる。あと寒い日が続く。
 竹楼は取り敢えず質問することにしていた。

「先輩の名前、聞いていいですか?」
「名前?私は三坂 実里(みさか みさと)よろしくね」
「三坂先輩ですか。よろしくお願いします」
「三坂じゃなくて実里先輩がいいなぁ」
「実里先輩、ですか。考えておきます」
「考える必要ないよね!?」

 竹楼は改めて実里先輩を見る。さっきまではただの痴女。いや変態だったが、それを抜けば、とても綺麗で、おしとやかでまさに大和撫子いった女性だった。

「実里先輩ってさっきの変態性がなければ可愛いですよね」
「可愛いのは当り前よ。それに普段はおしとやかを演じているわ。変態になるのはここと自分の部屋だけよ」
「自分で可愛いって言うのはどうかと思いますけどね」
「だったらSNSに写真を投稿してみましょうか?」
「それは後に黒歴史になりますよ」

 竹楼はにこやかに答えた。すると、実里先輩が頬を赤く染めて、

「う、うるさい!」
「そんな理不尽な!」

 変態の実里先輩とそれをツッコミをいれる竹楼。よいバランスが取れているのではなかろうか。
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